応量器とは禅僧が食事の際に使う漆器です。
鉢単、匙、箸、刷などの食器と、美しく重なった五つの鉢が袱紗で一つに包まれています。
これらを展げて食べものを頂くことから禅僧の食事は「応量器展鉢」と呼ばれます。
応量器展鉢では、器の並べ方や扱い方に厳格な作法が定められています。
しかも朝、昼、夜と微妙に異なるため、全て覚えるには相当な時間がかかります。
これらの作法は永平寺の坐禅堂にて代々伝承されています。
永平寺の坐禅堂は一般人は勿論現役の修行僧以外は入る事ができません。
応量器展鉢は誰に見せる為でもなく、ただただ「食」を参究することで磨きあげられた
結晶のような食のありかたといえるでしょう。
食べものを全て頂いた後は、その鉢でお茶を飲み、お湯を注いで応量器を洗います。
これを洗鉢といい、洗鉢に使うのは鉢一杯分の水だけ。それらも桶に集めて近くを流れる小川に還します。
鉢に残った最後の一滴も「折水の偈」を唱えながら有り難く頂きます。
準備、洗い物は勿論、片付け終わるまでが禅食なのです。