雲水喫茶の日替りマスター!!

卒寿のスゴロク

Rosemannさんというドイツ人のおばあちゃんに会いにドイツのHanauという街を訪れました。Hanauは日本の鳥取県鳥取市の姉妹都市です。

鳥取とHanauの架け橋となって長年日独交流に尽力されている彼女に初めてお会いしたのは昨年の冬。日独150周年の勲章を受章されベルリンの日本大使館を訪れた大坂靖彦さんが、ありがたいことに僕もその記念式典に呼んで下さったのがご縁のはじまりです。僕が鳥取出身ということもありその後も仲良くさせて頂き、今年11月3日の卒寿(90歳)のお祝いにご招待頂いたのです。

パーティー会場はとても華やか。美しく仕立てられたスーツや着物を着こなした、これぞ日独の紳士淑女といった面々がグラスを傾けて会話を楽しんでいます。絵に描いたような美しい欧州の描写は割愛させて頂きますが、特筆すべきは御夫妻の背筋の伸びた活力溢れる様子。特に颯爽と会場を歩き回り、一人一人に細やかな気遣いをして回るRosemannさんはとても90歳とは思えません。旦那さんに「シュジン」と声をかける姿が最高にチャーミングです。

お孫さんは
「なぜこんなに元気なのかよくわからない、休みの時はいつも若い人達と一緒に遊んでるからかもしれない」
と言っていましたが、この街の人々はみな澄んだ優しさと若々しさを年齢に関係なく持っている気がしました。

一方僕はこのような「場」にワクワクする気持ちがある反面、どう振る舞っていいのかわからずとても緊張してしまうので、リラックスして交流ができる面々に流石と憧れてしまいます。パーティは素晴らしく料理も最高に美味しかったのですが、思うように会話ができずとても疲れていました。

パーティーの後、招いてもらった自宅で「この子と遊ぶ方が性にあってるかも」とホッと犬のゾラを撫でていると、Rosemannさんの旦那さんがスゴロクを出してきてくれました。そうです、さいころをふって出た目の数だけ進むあの遊びです。ルールも極めて単純、息子さん、お孫さんも一緒に親類の方々とスゴロクで遊びました。今まで言葉にならなかった気持ちががひとつになって本当の家族のように感じました。別れるのがつらくなり、みんなもそう思ってくれていることが伝わってきて最後はお互いに抱き合ってさよならを言って帰りました。

思い返してみるとパーティー会場で僕は気の利いたことをしようとしていました。共通の話題を探したり、知的な会話をすれば交流が深まると考えていたのです。しかし人と心を通わすのに、特別な事をする必要はなかったのかもしれません。相手と心と身体を同じくして、ただ、遊ぶ。それだけで世代を超えて、人種を超えて、言葉を超えて、深い水脈を共有することができる。

笹川老師がよく言っていたじゃんけんの話を思い出しました。


右手と左手を目の前に出してみなさい、
互いに傷つけることができますか?
できやしない。なぜか。
それは根本でつながっているとわかっているから。
共有するものがあれば、調和が生まれる。


第二次世界大戦で集めていた人形をほとんど失うという体験。
それはRosemannさんが人形館の設立を志した原点でした。

おもちゃには人と人を隔てる壁をとりはらう力があります。
スゴロクでも積み木でも、なんだっていい、世界中の人が、ほんの1時間でもいいから様々な壁をとっぱらって一緒に遊んでみたらきっと面白いことになるだろうな。
100歳の老人も10歳の子供も1歳の赤ちゃんもみんなで一緒に心が動くこと。
それがアートであり、音楽であり、遊であるのかもしれない。

そんなことを感じた土曜の夜でした。
今週も好い日々となりますように・・・

星覚九拝

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以下、参照リンクーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

Rosemannさんのことを紹介しているウェブサイト。彼女の年齢を感じさせない元気な姿と、深い慈悲の心の原点は何なのでしょうか?

Rosemannさんを紹介して下さった大坂靖彦さんについて紹介してるサイト

大坂靖彦さんを紹介して下さった野田大燈老師の道場のウェブサイト

ハーナウにあるヘッセン人形博物館のウェブサイト

(おまけ)本文とは関係ありませんが、世界の子供達の夢をつなげることを目的にニューヨークの友人が運営している非営利団体「Happy Doll」のウェブサイト

2012/11/04  by

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