雲水喫茶の日替りマスター!!

ミャンマーの衝突

ミャンマーで住民の対立からたくさんの死者が出ているというニュースをNHKのウェブサイトで観ました。
多くの方々の陥っている状況を想い、祈らずにはおれません。

ただ、報道のされ方に疑問を持ったのでキーボードを叩きます。
これでは衝突の原因が宗教であると早合点してしまう気がしたからです。

サイトには以下のように書かれていました。

"
「ミャンマーで起きている仏教徒とイスラム教徒による宗教間の衝突は、双方の死者の数が67人となり、政府が推し進める民主化や国民和解への懸念材料となっています。
(中略)
衝突の直接のきっかけは、ことし5月、仏教徒の女性がイスラム教徒とみられるグループに暴行されたことですが、大多数を占める仏教徒の側にイスラム教徒への差別意識が根強いことも事態の沈静化を難しくしていて、ミャンマー政府が推し進める民主化や国民和解への懸念材料となっています。」
"

そこでこんな疑問を抱きました。


この事件は本当に「宗教間の衝突」なのでしょうか?


記事からは「仏教とイスラム教が民主化や国民和解への懸念材料となっている」と読み取れます。
しかし実際のところこの暴行に仏教とイスラム教がどの程度関係していたのでしょうか?

女性はたまたま仏教徒だったのでしょうか?
イスラム教徒(と見られる)の方々は女性が仏教徒だということを知っていて暴行したのでしょうか?

後半で
「仏教徒の女性がイスラム教徒とみられるグループに暴行されたこと」
が衝突の直接のきっかけと断定されているところも解せません。

そこにもし「宗教間の衝突」があったのなら、仏教とイスラム教がいかなる形であれ民主化や国民和解の懸念材料となっているのなら、お坊さんとしてほっておけません。その背景を明らかにして他山の石とするべきでしょう。
けれどもこの報道を読む限りでは何が起こっているのか全くわかりません。

そもそも「仏教徒とイスラム教徒」という対立の構造が僕には具体的にイメージできないのです。平和を愛する二つの宗教がどこをどう間違えたら対立の原因になりうるのでしょうか?

例えば近所に住んでるアフリカ出身のイスラム教徒の彼と、お坊さんの僕がしょっちゅう激しく喧嘩していることを無理矢理想像してみる?・・・それを「宗教観の衝突」と理解した瞬間に彼と僕の対立の本当の原因を探る事が難しくなると思います。



最後に
「大多数を占める仏教徒の側にイスラム教徒への差別意識が根強いことも事態の沈静化を難しくしていて、ミャンマー政府が推し進める民主化や国民和解への懸念材料となっています。」
と念を押すように書いてあります。

「仏教徒の差別意識が原因で事態が沈静せず、懸念材料となっている」
これを何も知らない人が素直に読んだら「仏教って差別意識の起こる危険な宗教なんだ」と思っても不思議ではありません。

僕は「この事件は宗教間の衝突じゃない」と主張したいわけではありません。
歴史を顧みると宗教が対立の原因と「考えられている」事件はいくらでもありますから宗教団体には確かに衝突を引き起こす要素があるのかもしれません。

しかしそれならますますどう間違えば衝突につながるのか、問題の真相を全力で明らかにするべきだと思います。特に日本は仏教が盛んな国(と僕は思います)です。きっかけがあったという5月からもう5ヶ月もたっているにも関わらず、納得のいくような背景が日本語で報道されないのはなぜなのでしょうか?

実際に遠い国で起きているこの出来事について、僕は悲しいほど何も知らない。

けれど一番怖いのは知らないことをわかった気になることです。
それならばご縁があるまで知らない方がまだいい。
「知らない方がまだいい」ことがたくさんあるという考え方や
その類の情報から身を守る技術は、学校では教えてくれません。

この報道のされ方に特に強い危機感を覚えたので僭越ながら書かせて頂きました。

もう一度問いたいと思います。

この事件は本当に宗教間の衝突なのでしょうか?
他に隠された背景はないのでしょうか?

ジャーナリストの方は現場で必死に取材をして下さっていると思います。
きっとこの衝突の背後には多くの語れない事実があるのでしょう。
自分のまわりにミャンマー出身の人や直接事件を体験した人、取材に行った人がいたら、是非話を聞いてみたいな。

そう思いました。


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以下、NHKのニュースサイトから引用
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121027/k10013056361000.html

ニュース詳細
ミャンマー 宗教間衝突の死者は67人
10月27日 0時49分

ミャンマーで起きている仏教徒とイスラム教徒による宗教間の衝突は、双方の死者の数が67人となり、政府が推し進める民主化や国民和解への懸念材料となっています。

ミャンマー西部、ラカイン州では、多数派の仏教徒と少数派のイスラム教徒・ロヒンギャとの間で対立が続き、政府はこの地域に非常事態を宣言するなど、対応に追われています。
しかし、州政府によりますと、今月21日から衝突が再び激しくなり、死者の数は67人となって、さらに増える可能性があるということです。
死者の数を巡っては、州政府が、一時、「112人」と発表していましたが、その後、「計算間違いだった」として67人に訂正しています。
ラカイン州では、双方の衝突による死者に加えて、暴徒化したグループに警察などが発砲したことによる死者も出ていると言うことで、今のところ事態収拾のめどはたっていないということです。
衝突の直接のきっかけは、ことし5月、仏教徒の女性がイスラム教徒とみられるグループに暴行されたことですが、大多数を占める仏教徒の側にイスラム教徒への差別意識が根強いことも事態の沈静化を難しくしていて、ミャンマー政府が推し進める民主化や国民和解への懸念材料となっています。

2012/10/30  by

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