先週の日曜の深夜に一時帰国から一ヶ月半ぶりに家に戻りました。
ちょうど同じ日に友人の母親がベルリンを訪れたので、翌朝パンのおいしい近所のカフェで会うことになりました。
彼女の父親(友人のおじいちゃん)は欧州ではちょっとした有名人。
名前を弟子丸泰仙と言って、欧州に禅を伝えた人です。
欧州の禅道場では大抵どこにいっても一番に、弟子丸老師の写真が飾ってあります。
1982年に老師が亡くなった後もお弟子さん達がAZI(Association Zen International)という組織で禅を受け継いでいます。仏、英、独、西、伊語の五カ国語で書かれた立派なウェブサイトからもその影響力の強さが伺い知れます。
このAZIのおもしろいところはいわゆる「本山」と呼ばれるような中心となる場所がないところです。
「Temple and monasterie」(曹洞宗から公式に認可された寺院)
「Zen Center」(曹洞宗から認可された教師がいる禅センター)
「Dojo」(経験を積んだ禅僧がいる道場)
「group」(坐禅を組む事ができるグループ)
「correspondant」(AZIの支部)
といったようなざっくりとした分類はあるものの、
それぞれ独立した「組織」がゆるやかにつながってAZIになっています。
「父は子煩悩な人間でしたが、日本にいる時と欧州にいる時では別人のようでした」
と友人の母親は言いました。
弟子丸老師はどんなことを想って禅をしていたのでしょうか。
道元禅師は仏道が盛んになることについて次のように言っています。
「今僧堂を立てんと勧進をもし、随分に労する事は、必ずしも仏法興隆と思はず。ただ当時学道する人も無く、徒らに日月を送る間、ただあらんよりもと思うて、迷徒の結縁ともなれかし、また当時学道の輩の坐禅の道場のためなり。また、思ひ始めたる事のならずとても、恨み有るべからず。ただ柱一本なりとも立て置きたらば、後来も思ひ企てたれども成らざりけりと見んも苦思すべからざるなり」(正法眼蔵随聞記3−6より抜粋/ちくま学芸文庫)
「ないよりは あったほうがと 建てたけど 柱のひとつも 残らば幸い」
といったところでしょうか。
40年以上も前に欧州に禅を伝えた友人のおじいちゃんの娘さんである友人の母親と
たまたまベルリンで朝ごはん。
たまたまベルリンで朝ごはん。
こんな不思議な巡り合わせも、おじいちゃんが建てた柱のひとつなのかなぁ
そんなことを思いながら焼きたてのクロワッサンで、カプチーノの泡をすくって食べました。
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