「死ななきゃいい」って思って上山したけど最近はあまり死に近づくことはない。
昨日一昨日と38℃位の熱が出てフラフラだったけど人間なんとかなるもんだ。
延寿堂だけは絶対はいんないぞ。
でも今日下手すりゃ死人が出る事件が。
部屋で五年目の和尚からこっそり入手した雑誌を夢中で読んでると、
ジルリルジルリルジルリル・・・・
その音は目覚ましと違い意識の網のひとつ奥まで入り込んで跡を残す音。
火災報知機の音だ。
明雄から消化器を受けとり「法堂西!」と皆が叫んでる中廻廊をかけあがる。
ウイルスが体の動きをじゃまする。
太ももが、横ダッシュを東伏見で五回したくらいに重い。
法堂の幕裏は煙っててなんだか荘厳な雰囲気さえ漂う。
確かににおうがどこにも火は見当たらない。またいつもの誤報かと思った瞬間赤い光が押し入れの中からフキ出した。
「何でこんなとこが!」
だれかがさけんでる。
泰守さんが消化器を噴射する。
俺も続いて黄色いピンをはずし、おそるおそる黒いレバーをにぎった。
火の粉が飛びちる押し入れの中にホースを向ける。
結局6人が消化器を使い火は消えておびただしいピンクの粉があたり一面に飛びちることになった。
放火だのなんだのみんな心配してたが、俺が一番心配だったのは、部屋においてとびだしてきた雑誌だった。
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