星覚です。
その後そこから100メートルくらいのところにあるウェブインパクトという会社で彼岸寺として現在開発中のiPhoneアプリの打ち合わせ。相当愉しいアプリになりそう。
お昼を食べポッドキャストの収録を行い、「禅を聞く会」なる会に出席するため有楽町に向かった。
ビックカメラの上にこんな立派なホールがあったのか!と驚くべき会場に着くとそこにはご年配の方々と僧侶ばかり・・・。同世代がほとんどいないな、これは退屈な話になるかな・・・と思って前方の席に腰をおろした。
しかし、それは大きな間違いだった。
特に花園大学教授の佐々木閑さんの話は非常にわかりやすく、興味深く、日頃伝えたくてもなかなか言葉にできないことをはっきりと示してくれた。休憩時間にはロビーで突然の質問にも丁寧に応えてくれて実に素敵な人だった。
必死でメモをとったので、自分の感想も交えながらそれを紹介してみよう。
そもそも僧とは。仏教とは。
そんな根本的な疑問に少しでも応えられると思う。
長く、編集なしですが、時間と興味がある人は読んでみて下さい。
今日も雲水喫茶に来てくれてありがとうございます!
どうぞよろしゅう
星覚九拝
ーーー以下、講演のメモ書きーーー
祈ったり求めたり、神に頼り、修行しない宗教が多い中、仏教は他の宗教とは違い「修行」をする。さらに修行といっても修道院の修行とお寺の修行とは意味が違う。修道院は神と自分の関係において修行するが仏教ではそうではない。
<星
仏教は三大宗教(キリスト教、イスラム教)の一つと数えられるが、宗教という枠に収めるのには少し違和感がある。少なくとも僕が永平寺の修業から感じた仏教は幸せを約束していないし、この人に頼ったり、祈ったりすれば万事OK、という部分がまるでない。
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仏教とはそもそも何なのか、それを知るには2500年前のインドの生活を知る必要がある。
そこにはカースト制という身分制度が厳然としてあった。それに反発して様々な宗教が生まれた。その中で現在残っているのは仏教とジャイナ教だけ。カースト制では人間は生まれながらにして地位が決まっている。でも人間に先天的な優劣はなく、変わることができる。偏見、先入観、うそでかたまった苦しみの世界で生きることをやめ、本当の世界を正しく見ることができる。心は理屈では変わらない、頭では変わらない。修行が必要になってくる
<星
大きな意味で、自分の意志で人間は変われないと思う。でも濁って見えていた世界を澄んだ目でありのままに見ることを修業は可能にしてくれる。
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オシャカさんは超利己主義。他の人のことなど一切考えられない程苦しく、切羽詰まっていた。いわば自分勝手な人だった。自分の幸せだけを徹底して求めた結果、悟りを開いて究極の幸せ、迷いや苦しみのない安楽の境地に達した。それで終わっていたらそれだけの話だった。ここからは伝説だが、そこに梵天さんがやってきて、その悟りをみんなに伝えて下さいと懇願した。オシャカさんは一般の人には理解できない、どうせ聞いてくれない、と断ったたのだが、それでもしつこく頼まれ、渋々やることにした。それが初転法輪と呼ばれる最初の説法。
<星
オシャカさんが超利己主義、というのは新鮮な発想だった。たしかに妻子を捨て、責任を捨てたのは他人を幸せにするためではなく、すべて「シャカ属の王子のわがまま」だったともいえる。
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ありがたい全知全能の人はいない。神様仏様に頼んでも仕方がない。
みんな一緒、わたしも一緒、誰も人をすくうことはできない。自分がやってきた精一杯のことを伝えることはできる。それを最短距離で効率よくやる方法も示すことはできる。
生命活動の前提となる衣食住。衣は落ちているのを拾い、食は鉢でめぐんでもらい、住は基本的に野宿でしのぐ。この衣食住を基本にしていれば、誰も何もしてくれなくてもそうするという覚悟ができる。つまり頂いたものはもらえばよい。なぜならそれによって修行に専念できるからである。苦行を勧めているのではなく、効率よくなるのが一番。
ツギハギの衣をまとっているのが俗人とは違って仕事を捨てているサイン。働かず生きていこうというのは虫のいい話だけど、その代わり誠実な生活をおくる。つまり修行をするために出家するのが第一則である。
<星
お袈裟はもともと落ちていた布をあつめて創ったもの。昔は布は貴重でなかなか手に入らないものだったが今では一回の食事より安く衣服が買え、捨てられる始末。なんか重大な前提がだいぶかわってきてる世界。
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そんな人に布施をするということは、最高の功徳で、果報が戻ってくる。だから大陸の仏教徒の母親は子供に布施をさせる。目先のことは誰も考えておらず、遠い将来の夢を持ちながらお布施をする。与えることの実践になれる。
でも中にはこまったおぼうさんもいる。こまったお坊さんにはみんながお布施をしない。ひとりが悪いと僧侶全体がそう見られる。ひとりでも犯罪者をだしたらサンガがつぶれるので、少なくともこれだけは・・・というものを創った。それが律で、200〜300ある。
律はある程度決まっている。人を殺せば、永久追放+その国の法律に従う。悟っていないのに嘘をつくのも重罪。普通の嘘はみんなの前で懺謝するだけでよい。
サンガが崩壊するのでやぶったら厳しい罰がある。
日本以外の仏教国ではこれらを厳格に守っている。日本は違う。海で隔てられている日本で仏教は宗教というよりも国際交流のために律が取り入れられた。律を認めるとお坊さんを都合のいいように操れない。もともと民衆の為でなく、国の統治の為だった。日本では奈良に伝わりその後すぐに遷都してしまった。比叡山中心にそこから仏教が発信されたためそれ以外のものは伝わり用がなかった。
国は律を捨ててしまった。律の代わりに戒が日本のおぼうさんの決まりになった。
戒は例えるなら「おばあさんに席を譲りましょう」。守らなくても罰則はないが自分の向上の為に守る。罰則はなく、日本独特のものである。逆に律は、サンガの運営のための規則で罰則が有る。
例えば不殺生戒は殺すことをすべて一括で禁止している。対象が定められていない代わりに罰はない。
一方不殺生律は「人とそれ以外」に別れる。人を殺したら永久追放。それ以外は懺謝、つまりサンガ内の他の人に謝って許される。人を殺したらいけないのは組織にとってその行為の社会的意義が人以外に比べ大きいから。
律が厳しく守られず戒ばかりの日本仏教は堕落してしまわないのか。
日本の仏教界で尊敬されて暮らすのは諸外国に比べて遥かに難しい。守らなければ厳しく追放される罰則がない。道路規則がない道を自由に行き来するのが難しいのと同じ。
しかし、律として書いてあるかないかは行動には関係ない、という良さもある。つまり律になければ何をやってもいい、という風にはならない。例えばスリランカのお坊さんはタバコを吸う人が多い。これはタバコを吸ってはいけないという律がないから。
<星
戒と律の違いのこの説明はとてもわかりやすかった。律の存在意義と限界をはっきりと認めている。永平寺でも罰としてお山から追放されるということはあった。お坊さんの世界でお坊さんとして生きていくことはできなくなるが、命をとるかどうかその他の罰則の判断は永平寺の仕事ではない。このようなシステムであればサンガ(僧侶の集団)の目的を見失うことがない。実に明快だ。
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オシャカさんは利己主義でせっぱつまって必死だった。もし豊かな暮らしに満足して出家していなかったら普通の王子様。どこにも道は伝わらなかった。言い換えれば自殺の可能性があるくらいの悩みを持っていたからこそ出家をして修行をした。それ以外に生きていく方法が他にない。普通に暮らせるにこしたことはないが、それが耐えられなかったから出家した。自殺志願者をすくう、他に行き場のない人をすくう、すべての人はすくえないかもしれないけど一人でも二人でもすくうというのは、オシャカさんの想いにかなっている。
<星
まずは自分自身の内的欲求から仏道を歩み、それがよりよい生き方だという確信を覚えること。それを他の人にも伝えることが慈悲なのであろうか。佐々木さんの講演はおしまい。以下安永さんのお話
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中国とインドでは環境が違うから同じ様にできない。インドは暖かいが、寒い中国では衣もいるし、托鉢も必要。
お姫様と侍女の話
お姫様の指輪が池に落ちたので侍女達に探させた。池の水は濁って探せば探す程見つからない。そこに賢者が現れじっとしているようにいった。池の水は落ち着き、指輪は次第にが自分から光ってあきらかになった。
インド的な禅は心を静める、中国では実用的なものだった。ここで静から動に変わった。一日のすべてが禅。平常心是道、即身是仏、一日不作一日不食というのはここから。
おはらいおきよめ、日本の伝統 神道の影響 禅寺掃除!!中国はそこまでやらない。
<星
永平寺の安居期間、交換留学のような形で中国のお寺で修業させてもらったことがある。外から顧みて感じたのは日本仏教の洗練されて細部まで深化した美しさだった。日本の国土が生み出した独特の仏教文化は短所も勿論あるだろうが、長所も多い。
情報革命で狭い一つの国の様になった世界で日本で深化した仏道が果たす役割は大きいのではないか。
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弓月、KAKUさんと都内某所の即席スタジオにてポッドキャスト収録の図
田上先生関連で、星さんからのメールが届いたので懐かしくなってのぞきにきました。
なんだか楽しそうなことをやっているねーーー。
いいな、いいな。
元気そうで何より。
皆さんによろしく!!
ぜひ富山にも寄ってください。
たじり
ひさしぶり!コメントありがとう!
富山は永平寺から近くだからいつもいきたいなーと思っています。
東京に来る時があったら是非色々お話聞かせて下され!
富山のことについてほぼ何も知らない自分に驚きました。
星。