月曜日にポーランドの"Łódź"(ウッジ)という街から小さな子供二人を連れて友人夫婦がベルリンを訪れてくれました。最初に出会ったのは1999年で、それ以来会うのは三回目です。ちっともおかまいできないし、せまいところで何もないけれど、と泊まってもらいました。
今住んでいる部屋には本当に何もない。といっていいほど、ほとんどモノがありません。彼らは持参した寝袋で寝ていました。
云く
「子供達が日本の友人の家で寝袋で寝るのを一ヶ月前から楽しみにしていた」
「畳が最高だ、是非ポーランドでも手に入れたい」
と。
ベッドも用意できなくて申し訳ないな、と思っていたので喜んでくれてとても嬉しかったです。
彼らが帰ってすぐの木曜日、今度は同じくポーランドの"Szczecin"(シュチェチン)という街から赤ちゃんを連れて友人夫妻がベルリンを訪れました。こちらは知り合ったのは最近だが何度も会っている兄弟のような友人です。ほんとうにおかまいなし、せまいことは重々承知だよね、と泊まってもらいました。
例によって今家には余っている布団がないので男は畳に寝袋、女子供は敷き布団を横にして二つの家族で川の字になって寝ました。
翌日は近所のカフェで、同じ時期にベルリンを訪れていた彼らの友人の日本人男性を紹介してもらって驚きました。なんと私の実家である鳥取県米子市が地元だというのです。しかも私が通っていた「イケチュウ」(米子市立福生中学校)の隣の中学校である「ヨネチュウ」(米子市立福米中学校)出身。
学年は二個下でしたが、狭い田舎のことです。当然「カメチャン」や「チカオカ」という私の幼なじみの懐かしいニックネームも知っていました(彼にとっては先輩です)。さらに驚くべきことに彼がよく指名するという地元の美容室のお姉さんはコシバさんというではありませんか。聞けば近所に住む姉の幼なじみ、私もよく遊んでもらっていた「コシバのエミチャン」です。耳慣れない固有名詞の羅列で申し訳ないのですが、その時の大変な高揚を感じて頂けたら嬉しいです。
ポーランド色の一週間だな、なんて考えながら家に帰ると、ポーランドの日本人学校でも勤務をし、帰国後は件の「ヨネチュウ」でも教師をしていた父親から電子メールが届いていました。なんでも東京の親戚を案内して西伯郡南部町を案内している時に偶然出会った旧友から安部朱美さんという南部町出身のアーティストを紹介されたといいます。
普段あまりメールをしない父親が興奮して連絡をしてきたのは、彼女の息子さんが昨年までベルリンの日本人学校に勤務していたという奇遇の報告ではありませんでした(もうこれくらいでは驚きません)。
彼女の作品達のことです。父親が送ってきた朱美さんの作品を撮った写真を見てしばらくディスプレイに釘付けになりました。
そのまま遊びだしそうな温かい表情の子供達。
そのまま遊びだしそうな温かい表情の子供達。
みなが望む平和で幸せな社会。
今、日本が、そして世界が思い描こうとしているひとつの憧れが、たしかな豊かさの記憶を通じて粘土に表現されていました。
筆舌に尽くし難いその作品の素晴らしさは特設サイトからも少しだけ伺うことができます。
そして、詩人の谷川俊太郎さんの書き下ろした詩が私の心を振るわせました。
同じ土地に生まれ育ったと知るだけで
初対面でも微笑みが浮かぶ
あいしあうものを きずなはむすぶ
にくみあうものを きずなはむすぶ
みしらぬものどうしすら きずなはむすぶ
ひとりではいきていけない わたしたちのいのちづな
(俊太郎さんの詩「地縁」「きずな」より抜粋 http://www.showa-dollart.jp/poem_1.html)
この一週間ポーランドを通じて「たまたま」私に縁のあった人達について興奮にまかせてつらつらと書きました。でも本当は「たまたま」気がつかなかった多くの人も、みんな何かしらの縁でつながっているのです。
目線もあわせずにすれ違ったあの人の歴史に思いを馳せてみて下さい。きっといつかどこかであなたと巡りあいます。
引かれ合う孤独の力を覚縁する
もともと僕たちみんなをつないでいる見えない糸
ポーランドとドイツはたくさん戦争をした
日本とドイツも戦争をした
世界中で戦争がたえない
そんなことを言う人達もいるし、もしかしたらそんな事実もあるのかもしれない
だけどポーランド出身の友人は「ポーランド」ではないし
僕は日本人だけど「日本」ではない
僕は日本人だけど「日本」ではない
ヨネチュウとイケチュウの違いなんてどうだっていいじゃないか
同じ地球に生まれ育ったと知るだけで、微笑みが浮かぶんだ
隣の人がみんな友達の友達だと思えば
戦争はバケツで水をかけあうくらいですむよ
きっとここはいい星になるね
今週も素敵な一週間を・・・
星覚九拝
以下展覧会等関係諸サイトのリンクです。
是非実物に会いにいってみて下さい!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
安部朱美さんの出身地、鳥取県西伯郡南部町での人形展情報
本日から一ヶ月間、鳥取県米子市で開催されている展示会情報
谷川俊太郎さん公式ウェブサイト
コメントする