雲水喫茶の日替りマスター!!

お坊さんの都知事選

今週は東京都知事選挙が告示され、来月9日の選挙に向けて16人がいよいよ正式に立候補しましたね。
今後の日本の行く末に少なからず影響する大切な行事と聞き、いてもたってもいられなくなってしまった拙僧。

主要な候補者の政策を概観できるわかりやすいサイトがあったので、お坊さんなら誰に投票するかを考えながらやってみました。
その結果・・・なんと私が最も合致するのはドクター中松さんでした(笑っていいところなのかな)!



というのも、15の設問のうち私がかろうじて回答できたのは
>知事の資質 その他
>原発の在り方 稼働せず廃止
>特定秘密保護法 反対
>カジノ設置構想 反対
のわずか4つ。他を「無回答」としたのはどの政策についてもあまりに無知で、お坊さんが安易に口を挟めるようなものに思えなかったからです。

しかしふと考えました。自信を持って政策の是非を判断できる人は一体どれくらいいるのでしょうか。

例えば私は直感で「原発は再稼働させずに廃止する」という選択肢を選びました。
しかしもし「再稼働せざるをえない、さもなくば破産するんです!」と涙ながらに訴えてくる人を目の前に、
「イエ、廃止シマス」
とその人に言い放つ自信はありません。まずはその人をよくよく聞いてなんとか話し合いお互いにとって最良の道を探ろうとするでしょう。


そう考えるとどの設問も「血流の聞こえる距離」、に立ってみないと何とも言えない難問ばかり。マニュフェストをヒラリヒラリと翻す政治家にも同情したくなってきさえしてしまいます。よく批難される「誰が都知事になっても変わらないよ」というのも案外的を得た答えなのかもしれません。

どうしたらいいのでしょうか。

どうしようもないのでしょうか。



いえいえ、実は仏教の考え方の中にその難問を解く鍵があると私は思います。


「昇進を望み、物の首となり、長老にならん事をば、古人是れを恥しむ。ただ道を悟らんとのみ思うて余事あるべからず」
(昇進を望んだり、物のかしらとなったり、住持長老の地位につこうと思ったりすることを古人は恥としたのである。ひたすら道を悟ろうということだけ考えて、ほかに何事もあってはならない/正法眼蔵随聞記 ちくま学芸文庫)

正法眼蔵随聞記で、道元禅師はリーダーになろうとすることについてこんなことを語っています。

昨秋鎌倉の円覚寺を拝登した際、臨済宗円覚寺派の管長さんである横田南嶺老師が仰っていた言葉も印象的です。

「私は歳も若く、何の役にも立ちません。だから役立たずに徹することにしているのです」

ここをこんなお寺にするんだ!といった力みもなく、あっさり自分は何もできぬと認めてしまうこの潔さ。


「そんなこといったら誰もリーダーになれない」
「現実の社会では到底やっていけない」
「役に立たぬいっても謙遜で本当は色々できるんでしょ」

そんな声も聞こえてくるかもしれません。

しかし仏教のサンガが事実、2500年以上も調和的な組織を存続させてこれたのはなぜでしょうか。道元禅師や、南嶺老師が、政策を立てたり、リーダーになることよりも大切にしているのは何なのでしょうか。


私はそこにとても興味がありますし、私達お坊さんは
「あ、なるほどそうか!仏教の考え方は世間離れしてるようでいて、実は一番シビアに現実を生き残るための智慧なんだな!」
と合点してもらえるような存在で有り続けたいと思っています。

勿論、投票に行った上で、ですよ!

個人的には一本化などの戦略的な決断もこの際ありかと思いますし、東京青年会議所主催の公開討論にただ1人堂々出席を貫いた宇都宮けんじ氏、若さと斬新さで家入一真氏に投票するのも面白いと思います。まずはとにかく誰かと話してみましょう!


そんなことを考えながら東京に住んでいるおばあちゃんに電話したら

「あんた都民じゃないじゃない。そんなことよりそっちは寒くないの?」

「うん、マイナス12度だから、何でも凍っちゃうよ」

白熱した討論の矛先は窓辺でつくる冷凍ミカンに・・・
マツリゴトはなかなか難しいものです。
しかしどうか、ご縁のある全ての人が好い日々をすごせますように




星覚九拝





追記 主な候補者の動画を見ることができるリンクを教えて頂きました。不思議なもので動画で見ると最初の30秒だけでもその人がどんな人なのか、なんとなくわかるものです。

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2014/01/26  by

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