昨日近所で托鉢中「ちょうどモンクを探していたんだ!(たぶん和訳したらこんな感じ)」という少し怪しげなボリビア人の紳士に声をかけられ「これだから托鉢はやめられない!」と愉快な修行生活を送っている星覚です。
さて、来月始めに東京で開催される知人アーティストの重富豪さんの個展のご案内です。テーマのひとつである「水の祈り」に大変共感を覚えました。(第一回「いのちの水に感謝・水の祈り展」詳細はこちらのウェブサイトから)
重富さんは時の流れ、水の流れを和紙にうつしとる流水紋作家で、その作品は京都・清水寺でも過去に二度展覧され、代表作品である「水神像」は清水寺に奉納されています(未公開ですが、今回の展覧会では現物が展示されます)また、昨年末にはフランス・ルーブル美術館地下施設、カルーセル・ルーブルでも展示されました。
彼のブログのタイトル「梵音海潮音」は永平寺でも毎朝唱えるお経「妙法蓮華経観世音菩薩普門品偈」の一節。重富さんのお師匠さんでもあり、比叡山延暦寺、戒壇院のご本尊や永平寺別院の紹隆寺の三世如来をお造りになった仏師・西村公朝さんが重富さんの作品を見たときに「この作品から宇宙根源の音が聞こえてくるようです、宇宙根源の音=梵音海潮音」と言われ、そこからつけられたものだそうです。
水の祈り、お寺、仏教・・・なにやらつながってきそうですね!
永平寺には三黙道場と呼ばれる三つの道場があります。坐禅堂、東司(お手洗い)、浴司(お風呂)がそれにあたり、特に坐禅堂は坐禅以外に、食事をし、寝る場所でもあり、喋ることは勿論、大きな音をたてることが厳しく禁じられている最も大切な修行道場です。
なぜこの三つが最も大切な修行道場とされているのでしょうか?
その秘密は水にあります。
三黙道場のいずれもが、自分の身体を通った水を外界に返していく大切な通過点であり、あまり人目につかない場所でもあります。これらの場所で作法を調えることで、本能に近い素直な自分の身心が調っていきます。磨かれた清らかな祈りは水を通じて世界中に調和の波として広がっていく。
どこのトイレでもキレイに使う、一滴の水も無駄にしないよう静かにお風呂に入る、一粒も残さないように丁寧に感謝をこめて食事をする・・・身心作法を正して水に祈りを込めればそれは世界中に広がっていきます。
どこのトイレでもキレイに使う、一滴の水も無駄にしないよう静かにお風呂に入る、一粒も残さないように丁寧に感謝をこめて食事をする・・・身心作法を正して水に祈りを込めればそれは世界中に広がっていきます。
逆に誰にも見られていないからといって、お風呂、トイレ、食事や就寝の場で自分の欲望や執着、心の乱れを露にしてしまうとそれが世界中に巡って自分に返ってきます。
修行中は三黙道場以外にも洗面や雑巾がけなど、「水」に直接触れる機会には特に厳しく所作を調えていきます。 代表的な物が雲水がまず初めに覚える「応量器展鉢」の食事作法。
修行中は三黙道場以外にも洗面や雑巾がけなど、「水」に直接触れる機会には特に厳しく所作を調えていきます。 代表的な物が雲水がまず初めに覚える「応量器展鉢」の食事作法。
ベルリンの道場で使っている応量器達。
応量器とは禅僧が食事の際に使う漆器で、匙、箸と美しく重なった四つの鉢が一枚の布で包まれています。鉢を展げて食事を頂くことから「展鉢」と呼ばれていますが、食事を頂いた後は、同じ鉢でお茶を飲み、お湯を注いで洗います。そのお湯も全て頂き、最後の一滴も桶に集めて祈りを込めて小川に返し、食事が終わる頃には洗いものも片付けも終わっています。永平寺では今日もこの作法通りに食事が行われ、水を世界に循環させているのです。
応量器とは禅僧が食事の際に使う漆器で、匙、箸と美しく重なった四つの鉢が一枚の布で包まれています。鉢を展げて食事を頂くことから「展鉢」と呼ばれていますが、食事を頂いた後は、同じ鉢でお茶を飲み、お湯を注いで洗います。そのお湯も全て頂き、最後の一滴も桶に集めて祈りを込めて小川に返し、食事が終わる頃には洗いものも片付けも終わっています。永平寺では今日もこの作法通りに食事が行われ、水を世界に循環させているのです。
永平寺の坐禅堂には一般人は勿論、現役の修行僧以外は入ることができません。「応量器展鉢」は誰に見せる為でもなく、ただただ「食」を追求することで磨きあげられた一切無駄のないシンプルな作法です。普段人の目に触れないところで、水と祈りは巡っているのですね。
いつもそばにありながらあえて意識することの少ない水の声、これをきっかけに耳をすませてみてはいかがでしょう?
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第一回「いのちの水・水の祈り展」
日時: 7月2日(月)~6日(金)
料金: 無料
場所: 八芳園2階 ウインド
東京都港区白金台1-1-1 電話03-3443-3111
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