ちょっと粋な禅の旅「オフの細道」

報告! 第15回禅の旅 感想文

ニューヨークから嬉しいお便りが。

第15回禅の旅に参加してくれた女性が禅の旅日記を書いてくれました。坐禅の緊張感や、作法にのっとった食事に熱心に取り組む様子が伝わってきます。

日本とアメリカ双方の心を深く理解して、美しい日本語と流れるような英語を巧みに使いこなす彼女は、現在NYの大学で環境科学を学んでいます。アメリカの文化の中で生きる彼女の目に永平寺はどのようにうつったのでしょうか?

歌と音楽をこよなく愛し、自然の声に静かに耳を傾ける姿が印象的でした。将来日本とアメリカ、そして世界を平和でつなぐ素敵な人物になるでしょう。

ありがとうございます!

ーーー第15回禅の旅の様子はこちらからーーー
ーーー以下RIOの禅の旅日記ーーー

永平寺

息が切れる程頂上までの長い道のり。天辺に着いた途端、柔らかい風。「良くここまで頑張りましたね」と言いかけてくれているようだ。頂上から見えるのは何年もの歴史を大切にしまいこんできた永平寺。

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東京から車で九時間も離れた永平寺は私の想像を超える程立派なお寺だった。果てなく続く森の中、ひょこっと見える永平寺の七つの屋根。長い歴史をしまい込んだ永平寺。あんな立派なお寺に入るのは楽しみだ。下り坂も自然や動物たちが応援してくれる。周りをふわふわと飛び回る美しい蝶々。木の枝の隙間を通る優しい太陽の光。そしてトンネルの様に私達を包む自然。汗を流しながらもふっと思った事、私達は幸せだ。



今日から二日間、私達は仏教の素晴らしさを沢山知るのだった。

坐禅は基本。
なにも考えず、姿勢正しく;これがいわゆる坐禅だ。
しかし、坐禅にはそれより更に深い意味があった。
仏教のゴールデンルール:求めることは苦しむ真の理由だ。だから坐禅をし、気づきあげるのだ、本当の平和を。

私達が泊まらせていただいていた天龍寺に到着すると晩御飯の時間だ。晩御飯は皆そろって静かに。そしてもちろん、姿勢正しく。大きな器に冷麦たっぷり。こんなの食べ切れるのか?と心配しながら、残しては勿体無いと言う想いを常に持ちながら、全て食べ切る。まだ幼くて六歳で参加している少年も頑張って沢山食べている。食べ終わった器にはお茶を少し入れて沢庵で汚れをふき取る。その沢庵を食べて、そしてお茶も飲んでしもう。

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御飯の後は坐禅。正しい坐禅の仕方を教わってから畳部屋へ。部屋を入る時は左足から。仏像に一礼をしてから一人一人席を取る。座敷が置いてある畳の前に木で出来ている部分がある。そこではお食事をしたりするので、足を置いていけないのが規則。自体を持ち上げて奥の方に「ひょいっ」と体を運んで坐禅が始まる。周りには9時間の間、車の中で一緒に過ごした9人のメンバー...。

皆でやる四十分間の坐禅はすぐに感じる。

何も考えず頭を真っ白にする。

こうして自分なりの平和を見つけ出す。

しかし後ろですたすたと静かに歩いているお坊さんの人影には冷や冷やしてしまう。それにしても、部屋が真っ暗で木のいい香りがするせいで思わず眠くなってしまう...頭が重く感じ、目がどんどん閉じていくのを感じる。そんな時には合掌。それに気づくお坊さんは私の後ろに立ち、一度優しく右肩に棒を置く。それに反応する私は、頭を左の方へと下げる。その瞬間、『喝!』とは天龍寺では叫ばないが、恒例の言葉。じわ~っと痛みが広がり、一気に目が覚める。

3回ほど聞こえる『ぺしっ!』と言う大きな音。皆よっぽど疲れてるんだなぁ~と思ってしまう。メンバーは数日前サマーキャンプから戻って来たばかりだ。沢山の小さい子供達と過ごす一週間はかなり体力を使った。

坐禅が終わったと合図する金の音。礼をし、畳部屋を出る。出る時は右足から。
坐禅をし終わった体はやはり前より軽い感じがする。頭の中でうるさく浮かび上がってくる想いや悩みは静まっている。

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坐禅の後は仏教を理解するようにと皆で一章読んでから、一人一人感想を言う。「求めてはいけない、だから坐禅をする」と言う考えを意識した一章に対して皆はさすがに色々な感想が溢れ出てくる。

『坐禅は本当にそんなに大切なのですか?でしたらもしも核爆弾が落ちて来たら和尚さんはどうしますか?』

これに対して和尚さんは

『坐禅をします。なぜなら、坐禅は人々を世界平和へと導くからです』

と答えました。

『今はとても幸せです。なにも求めることがありません。今は死んでもいいぐらい満足しています』

『坐禅は一人でする物ですか?もし坐禅は自分の中の平和を探す為にするものなら周りの人はどうなるのですか?』

これに対して和尚さんは

『坐禅は土の上に人が二人。坐禅は一人でやるものではなく、二人以上でやることである。皆で力を合わせて、自分の平和を探すのです』

と答えました。

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皆が和尚さんに伝える感想や疑問に思う事などを考えながら眠りについた。
朝は大きな金の音を聞いて目が覚める。

『カーン、カーン、カーン』

時計に目を向けると、午前3時15分。修業をしているお坊さん達は毎日こんな朝早くに起きるのかと思いながら無理矢理疲れた体を立たせる。

朝起きたらすぐ坐禅...さすがに眠い。朝の40分間の坐禅は何故か少し長く感じる。始まってからかなりすぐにお坊さんに背中を打ってもらう。他のメンバー達もぺしぺしと打ってもらっている。皆さすがに3時起きは慣れていないのだろう。

坐禅が終わると10人揃ってバンに乗って永平寺へ向かう。皆眠いが、永平寺は楽しみだ。永平寺に着いた10人の中の何人かはびっくりする。かなりモダン化されている永平寺。受付場所はまるで最近の建物のようだ。

それでも中へ入ると古い歴史を強く感じる。外は雨。雨の音や香りも永平寺の美しさを増す様な気がした。スムーズで立派な木で出来た廊下や階段。昔はガラスが張っていない窓であった為、建物の中に水が流れ込んでしまっていた。そのせいで階段は少し下へ傾いて出来ている。そして階段の横には雨の為の斜めな通路が出来ている。こうして、建物の中に水が溢れないように対策していたのだ。

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(photo by YU NOZAKI)

お経を聞く為、大きなな畳部屋に私たちは案内された。数えきれない程のお坊さんが畳部屋に入ってくる。まるで取り付かれた様にお坊さん達はお経を唱える。1時間のお経を聞き終わった私たちは、永平寺のツアーに出た。巨大な永平寺は2時間ほど近く時間をかけて案内してもらった。美しい美術や複雑な建築術を含んだお寺は見た事のないお寺だった...さすが歴史なる永平寺。

永平寺を出た私たちは小さなおそば屋さんへと向かった。8時半になり、やっと朝食の時間。3時から起きている私達はお腹を空かせていた。美味しい朝食をいただいた後、メンバーはその場で寝転び、眠ってしまった。お昼寝にしては少し早い時間だったが、私達はくたびれていた。

禅の旅は終わりを告げる時がやって来た。天龍寺に戻り荷物をまとめた私達はお寺の前で和尚さんと写真を撮ってお別れを言った。『本当に素晴らしい経験をありがとうございました』と皆はお礼をし、またもや長い時間バンに乗る事になったのだ。

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一言では片付けられない素晴らしい経験。普段の生活では想像も出来ないお食事や睡眠時間。普通には見られない立派なお寺やお経を唱えるお坊さん達。これからも続けたいと思う、平和を生み出す坐禅。

普通ではない、しかし最も美しくて素晴らしい経験、禅の旅。

2010/10/07

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