雲水喫茶の日替りマスター!!

酒、賭け、売春、金、Slaughterhouse

先週あるドイツ人と出会った。

彼女は修行僧だった。膝下まで伸ばした髪を巻いてターバンをかぶっていた。
16歳の頃に「東へ」と思い発ち、イタリアまで歩き、ギリシア、イスラエルを経て船でインドに向かった猛者らしい。それから東南アジアを旅して、1988年には日本を訪れたこともあるという。そんな話が信じられないくらい、柔らかで穏やかな空気をまとった瞳の美しい僧だった。

その後インドに戻り10年以上も洞窟の中で瞑想修行をして過ごしたが、パスポートもビザも申請していなかった為に不法滞在扱いになり、再申請の為にベルリンに戻って来ているらしい。

彼女は日本を「home」と感じると言い、とても気になっている様子だった。
「でも、今大きな岐路にあるわね」
そう呟いた。
FUKUSHIMAのことを話した。

これからどうするべきだと考えますか?と聞くと

「Root(根っこ)とreconnect(再びつながる)することじゃないかしら」

「一番難しいのはGree(欲)と向き合うこと」

控えめにはっきりとそういって
欲にまつわる最も危険な5つの要素を教えてくれた。



"KAL DEV"
Alcohol / Gambling / Prostitution / Gold / スローターハウス
(彼女が教えてくれたKAL DEVという言葉はググってもヒットしなかった)




スローターハウス?何のことかわからなかった。
牛や豚を殺すところだと説明してくれたので何となく日本語で想像はついていたけれど家に帰って改めて検索してみた。

「屠殺場 英語」

そうしたら
"slaughterhouse"
という言葉が出て来た。

そして「時々シュールな精進日和」と題したブログも検索上位にひっとした。

そのブログには屠殺場見学の様子がスケッチを添えて文章で綴られていた。
絵文字が多用されていが、ふざけるわけでも、悲観的になるわけでもなく、等身大の感情で綴られていた。



あぁ、言うは易しだなぁ



ガツーンときた。ブログではない。自分自身のことだ。


お寺では食前に、目の前のモノがどこから来て、だれの手によってどう届けられたか、細かく思いを馳せる習慣がある。
「一つには功の多少を計り、彼の来処を量る」
という「五観の偈」を唱え、合掌することをこれまで僕は多くの人に勧めて来た。

毎日偈文を唱えながら想像はしていた。
しかし正直、ここまでは思い計ってはいなかった。

想像以上に衝撃的なブログを読んで想像以上の衝撃を受けた。
勿論著者にお会いしたこともなく、全て真っ赤な嘘かもしれない(そうだとしたらそれはそれですごいけど)。でもここで描かれているような商業的な屠殺場は実際にあるはずだし、そこに行った人がどれくらいるだろう?それでも尚、同じように肉を食べることができるだろうか?

ベルリンは菜食主義者が多いけれど、それは小学校の時にきちんと本当のことを伝えるからだと現地の友人が言っていた。

「本当のこと」というのはどうやったらわかるのだろう?

たくさんの疑問が頭に浮かんでくる。



肉を食べるな!菜食主義になれ!といっているわけではない。
僕自身、(自分からすすんで買うことはないけれど)肉を出されたら有り難く頂く。
大好きなラーメンを一生食べられなくなるのはどうしても避けたいというちっぽけで欲深い願望もある。

伝えたかったのは、普段あれだけ食事に思いを馳せろと言ってきたのに
インターネットでどんな情報も手に入る気分になっていたのに
結局、自分が見たいものしか見ていなかった
見たくないことには、ここまで盲目であったかという驚きと反省だ。

しかも、屠殺場だけではない。
酒、賭、売春、金・・・まだまだある。

ひょっとしたら世の中の多くの問題は、どこかの誰かのせいではなく、無邪気な自身の何気ない行動の結果ではなかろうか?些細な日常の裏に想像以上に衝撃的な「本当のこと」があるとしたら?僕はそれを知りたいと思うだろうか?知らないふりをして今自分が考えている善を守りたいと思うだろうか?

「酒も賭も売春も金も屠殺場も、それ自体は決して善でも悪でもない」

修行僧の彼女はそう強調していた。マザーテレサは「愛の反対は無関心である」といった。しかしながら僕の行動基準は、未だに善か悪かを考える頭によって大きく支配されている。

「危ないよね、気をつけようね、一人一人が真剣に考えようね」

という思考法ではいくら関心を持って熟慮したところでこの問題は解決しそうにない。

今、この世界に必要なのは言葉にならない善悪を扱い、バランスをとっていく智慧なのではないだろうか。

「ベルリンでもらったの!文明はたいしたものねぇ」

化学繊維でできたビニールの雨靴を履いてお店を出て行った彼女はとても楽しそうだった。






ーーー追記ーーー2013年1月15日

本文中に登場したブログは現在移転しており、
こちらで新しいブログが更新されているようです。
http://vegemanga.cocolog-nifty.com/blog/

ベジタリアンのラーメンなるものもあるみたい。
http://amzn.to/W2Ec33

また、京都にある焼き肉屋さんからベジタリアンのお店になった!というお店でもラーメンが食べられるとのことでした。

http://www.veganscafe.com/

たくさんの情報をありがとうございます!


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2013/01/13  by

コメント(2)

欲と向き合うこと。過去現在、きっとこの先の未来永劫人間が抱えてゆくであろう課題なのでしょうか。
平家物語の祇園精舎の鐘の声・・・をふと思い出したのですが、栄えたものは必ず衰えてゆくという意味でしたでしょうか?その栄えるという根本には「欲」も関わっているのでしょうか。それが善か悪かはわかりませんが。
またまた星覚さんのブログでうーむと考えてしまいました。

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