社交ダンスインストラクター井上淳生の「A little star in our body」

#6 ダンスを教えるということ

CIMG2401.JPG≪営業先のダンスホール。ぴかぴかのフロアが踊り心をくすぐります。≫ 

 

みなさん、こんにちは。

 

僕は、社交ダンスを教えるという仕事をしています。


社交ダンスに限らず、人に何かを教えるということは、とても奥が深いことですよね。

 

マニュアルがない行為。

あったとしても、そのまま使えない。

自分だけの「教えるスタイル」を獲得するしかない。


そんな行為だと思っています。

 

だから。

 

いつも手探りです。

実験です。

 

なので。


「教えている」というよりも「教えさせてもらっている」という感じです。


教えさせてもらうことによって、自分の引出しを増やしているというか。

新たな対応の仕方を教わるというか。


「こういう言葉使いをした方が伝わりやすいのかな」とか、

「こういう例えを出した方が記憶に残りやすいのかな」とかを考えます。

 

こういうことを繰り返して、自分だけの「教えるスタイル」を育てていくんだと思います。


酵母を入れたビールが、こぽこぽと醸成していくように。


僕は、物事を根源的に考えたいと思っている方なので、

社交ダンスを教えるにあたっても、

「社交ダンスを教えるって、どういうことだ?」

みたいなことを考えてしまいます。

 

「そもそも教えるって何?」


みたいなことに、必ず行き着いてしまいます。


はっきり言って、今も良く分かりません。


ただ、今の時点で分かっていること。

ぼんやりと「教えるってこういうことかも?」的に思っていることは。


その時その時によって、

自分が何を教えようとしているのか、相手が何を教わろうとしているのか、

が変わってくるということ。


それと。


何を教えたいか、何を教わりたいかを、

ピンポイントで言葉にして相手に表明することは、意外に難しいということ。


この2つくらいです。


特に2つ目。

これは、すごいおもしろい点だと思います。


「何か聞きたいことがありますか?」


と聞いても、ずばっ!と言える人はほとんどいません。

僕も教わる時には、言えないことが多いと思います。

 

「決してうまくいった実感はないんだけど、何て聞いていいか分からない。」 


それが正直なところだと思います。


言えるとすれば、

「このステップの、この辺のタイミングの、この身体の使い方が良く分からない。」

という表現です。


これは、模範解答だと思います。

しかし、とても解釈の幅の広い表現です。


聞き手の数だけアドヴァイスの数もあると思います。


だから。


こういう時、僕は、

「相手が聞きたいと思っているところの周辺」を探って、

「この辺ですか?」というような応答をして、

聞きたいことの中身を徐々に特定していくようにしています。


整体師が「ここ、痛くないですか?」と聞きながら、マッサージするのに似てますね。

 

たぶん、そうやることで、お互いの認識がすり合わされて、

「今、自分たちはこれについて練習してるんだな。」という目的意識が生まれると思います。 



僕は、社交ダンス教師という仕事の良い所の1つは、11の関係という点だと思っています。

 

自分1人 と 相手1人。

自分1人 対 大勢 ではなくて(もちろんそういうクラスもありますが)。


社交ダンスが、基本的に1人の男と1人の女が踊るようにできているから、

それは当然なんですが。


そういう関係性だから、相手をじっくり見つめることができる。

 

不特定多数の「お客さん」を効率良くさばく、という発想ではなくて。


特定の1人の相手の特徴を考えて、その人に合った言葉使いや助言を考える。

そういう配慮の精神が養われる仕事だと思います。

とても素敵な仕事だと思います。


常にマンツーマンだから、お互いの認識のすり合わせに、じっくりと時間をかけられる。

言葉を使って、身体を使って、お互いの認識を接近させていく。


そんな営みが、社交ダンスの世界にはあるようです。


人に何かを教える。

 

それについて学ぶ機会に恵まれている世界なのかもしれません。

 

今回はこの辺でzzz

2009/09/30

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