社交ダンスインストラクター井上淳生の「A little star in our body」

#13 雪むし

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《サッポロクラシック♪このカゴを持ってピクニックに出かけたいです♪》


みなさん、こんにちは。


札幌はすっかり寒くなりました。

息が白いのは当たり前。

手袋を2重にしたいほど、風が冷たく、体を切っていきます。



さて。


 雪むし


という虫がいます。


ご存知でしょうか?


北海道に住んでいる人は、

ほとんど知っている虫です。


秋の終わり、冬の始まる頃に、発生する小さな羽虫。

アブラムシの1種のようです。


自転車をこいでいると、

何匹もの雪むしが、服に飛びついてきます。


この季節になると、必ず見かけます。


それが1年を通じての習慣になっているので、


    

    今年はもう雪むしを見た。


とか、


    今年は雪むしが多いなー。



といった、表現が日常にあります。



雪むし。

雪の虫。


雪の降る北の国にぴったりですね。



            その季節の風物詩のように、

            ある時期に発生し、

            誰もがその存在を、

            嫌でも認識せざるを得ないもの。


        でも、


            その時期を過ぎると誰からも忘れ去られてしまうもの。


雪むしは、そんな存在です。



ダンサーにも似た部分がありそうです。



社交ダンスのインストラクターという仕事は、

「人に見せる」仕事です。


コンペやパーティーで、フロア上の華になる。

スポットライトを浴びて、注目の的になる。

各部分を強調するためのメイクを施し、きらびやかな衣装を身にまとう。



そうやって、人に見られることが、

当たり前のように日常に組み込まれている仕事です。



しかし。


祭りが終われば、

ダンサーは舞台から退場します。


スポットライトも消えるし、フロアも閉鎖される。

衣装も脱ぐし、メイクも落とす。


そして、観客の前から姿を消します。


ダンサーだからと言って、

常に踊っているわけではありません。


ダンサーだからと言って、

常に人に見られているわけではありません。


コンペやパーティー以外の時間の方が、

ずっとずっと長いのです。



だから。


人前に出ていない時は、

みんなの記憶から忘れられる可能性も大きいのです。



しかし。


ダンサーを仕事にしている以上は、

忘れられては困ります。



なので。


踊っていない間も自分の存在を忘れられないために、

みんなの記憶に残るようなチャレンジをしなければなりません。


それが、

コンペでの好成績であったり、

パーティーでの高評価であったりするのです。



自分が踊っていなくても、

踊っている姿を見せなくても、

その評価を聞くことで、


 あぁ、あの人はこれだけ評価されている人なんだな。すごいんだな。



という評価を得なければならないのです。


そうやって、


年間を通して自分は咲いている、存在している、


ということをアピールする必要があるのです。



これは、人間に特有だと思います。



雪むしが、


  「おれらって、冬の初めしか、みんなに思い出してもらえないよな~。

   それって、めっちゃ寂しいよな。

   よし!

   春も夏も秋もみんなに思い出してもらえるようなキャンペーンをやろう!」


といって、戦略会議をしている

なんていう話は聞いたことがありませんよね。

(中にはいるかもしれませんが...)



人前に出ない時にも、

自分の存在を忘れられないようにするという試みが

良いか悪いかという話ではなく、



形が変わったから、目に見えなくなっただけで、


かつてダンサーだった人は、今もそこにいる。

かつて雪むしだったものは、今もそこにいる。


そういう想像力を持っていたいという話でした。


星覚の言うように、

この世の中には、人間の認識を超えたものがいくつもあるのでしょう。


それを想像力という道具を使って、

自分の感覚とつなげていく作業を続けていきたいですね。

地道に。



今回はこの辺でzzz

2009/11/13

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