雲水御用達!用語集

擎盤 keiban

庫院から食事を頂いてくることを擎盤と呼ぶ。

毎回食事は庫院から僧堂や各寮に運ばれてとられるためこの言葉は永平寺でもっとも多く使われる言葉の一つである。
入山したての雲水が一週間で膨大な寮を全て書き写すことが命じられる「衆寮公務帳」にも擎盤という単語は頻繁に登場する。その画数の多さからKバン等と省略して書いて大目玉をくらった雲水もいるとかいないとか。

また、雲水達の間では「何かをもってくること」の意味にも広く使われており、しばしばあまりよろしくないことにも使われる。

「門前のお店から「◯◯」を擎盤してきた!」とか、「山林系の小屋から「◯◯」を擎盤してきたぞ!」などという状況は一年目の雲水がもっとも盛り上がる瞬間でもある。

さておき、正しい擎盤には細かい作法が定められている。

例えば直歳寮を例に挙げてみよう。

まず擎盤の為の桶等の入れ物を各寮の雲水達は庫院に持っていく。
挨拶の場所は決められており、そこを一歩でも間違えると庫院の寮長さんからおそろしい罰が待っている。

挨拶の場所にいたったならば出しうる一番大きな声で「ごめん下さい!直歳寮の星覚ですが、擎盤に参りました!」と叫ぶ。

その後、食事をもらうのだがそのもらい方にも順番がある。朝食の場合擎盤するのは、浄粥(おかゆ)、ごま塩、香菜の三点だが、ごま塩、香菜、浄粥の順、つまり応量器を展鉢した際に左にくる位の高いものを後にもらわなければいけない。

まずは擎盤表に寮舍名と人数を記し、ごま塩の器を「両手で」持ってごま塩を配っている庫院の和尚の所へ行き、「直歳寮、ごま塩10名分お願い致します!」といってごま塩をもらう。もらった後は「ありがとうございました」と厳かに頭を下げる。

その後一度最初に挨拶をした場所に戻って、ごま塩の器を置いてから今度は香菜の器を持っていき、「直歳寮、香菜10名分お願い致します!」という。もちろんこの時も「ありがとうございました」といって厳かに頭を下げる。そしてまた器を「両手で」もって置きに帰り今度は浄粥の桶を持って粥の入っている大きな釜の前まで行き「直歳寮、浄粥10名分お願い致します!」「ありがとうございました!」とやるのだ。

一度にもらえば合理的だからと両手でもっていったり、挨拶を省略したりしようものなら(そんな恐ろしいことをする雲水はいないが)庫院の寮長さんから包丁が飛んでくる可能性さえある。

中食ともなると品目が「香飯(ごはん)」「香汁(みそ汁)」「香菜」「別菜」と種類が増えるので更に挨拶に手間がかかる。

永平寺では食事を最も大切な修行の一つとしていることが擎盤の様子からも伺える。

2009/02/25