雲水星覚の永平寺修行日記「僧想!」

05/03/09 春の香

太陽の光に春の香りを感じる様になってきました。

厳しい寒さは次第に心地よい寒さとなって山を包んでいます。
相変わらず国際部は忙しく、三月四月は参禅者の予約が一杯で断るほどになっています。

体の調子は毎朝の坐禅ですこぶる良好。
今すぐ永平寺を出てみたいという気持ちはいつもすごくある、しかし娑婆は自由だからこそ相当強い意志がなければ道を極めるとは難しいと感じています。

3泊4日の参禅に来たマットとエイミー。マットはひざの痛みがひどくなったエイミーを気遣い、二人とも2泊3日になった。

そりゃあそうさ。エイミー、足長すぎなんだもんさ。座禅で足組もうとしてたんだけど、どう考えてもあのスペースにあの足が収まるわけがない。物理的に不可能だもん。
いいなあ。俺より背が高い。へこむね。

参禅者とはいえ、女性と話すとup set。

久しぶりだ。次の食事の時には、もう全山に噂が広まっているくらい。

まあ楽しかった。

Pestle(すりこぎ)って言葉教えてもらったりね。いのちとか世界の話とかこむずかしい話もちゃんと聞いてくれて、すげーいいやつ!エイミーがなぜ日本に来たのかとか、将来の夢とか、オーストラリアの話だとか他愛も無い話をした。


マットは、というと、こいつはすごい。日本人にも、なかなかいなさそうな侍魂を持っている。音を立てて歩かないし、サンダル履きはキチンとそろえるし作務の時は、一番良く動くし、それでいてちょっとハマリすぎてて危ないんじゃ...っていうところが全くなくて、気さくでジョークもうまい。崇岳みたいだ。

三日目はエイミーが参籠扱い(雲水と同じ「参禅」体験ではなくどちらかというとお客様扱い)になったから部屋で食事、マットは禅堂飯台だった。当番所に急いでもどって真実が用意してくれた昨日のそばの残りと天ぷら(天かすといった言った方がよい)を口に押し込んだ。

1時からは参禅の部で中食が終わったマットらと一緒に再び全山をまわる。マットは写真を取りまくり。振り向いていつもシャッターポーズ、俺の写真の取り方となんか似てるって思う。狙いも良い角度を狙ってる。澄んだ目をして、禅に興味をもってくれる二人におみやげを渡したかったけどできなかった。二人は深いおじぎをして門前に降りていった。

杉の間からほんのりと春の日。
明るい。山を下りたとき又会えると良いなと思うと、又考えた。

生きるって事に「また会えるといいな」はない。

彼らは降りる。
俺はこの瞬間まで隣にいた彼らと交わることのない生活をすすむ。

次回会うってことは、あるようでない。

「帰らぬ人となった」

「帰ってくる人」はいるんだろうか。

ギャーテーギャーテーハーラギャーテーだ。

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あとがき

ひさしぶりの僧想です。永平寺にいた時から随分時間がたちました。昔の日記はなんだか恥ずかしいですね。しかし今読むとはっとするような言葉が書かれているのでそのまま公開していきたいと思います。とにかくこのマットとエイミーの熱心に修行する姿に、まもなく二年目の雲水は大きな影響をうけました。

2012/01/30

コメント(2)

きたー!思ってたより早かったー!あぐらもかけない俺が永平寺で坐禅してるような気がしてくるもんなー。おまえがなぜ永平寺に登って、なぜまさかの3年間も修行して、そしてなぜ降りようと思ったのか。聞きたかったけど、直接聞けば手短に終ってしまうような勿体なさがあったのさ。まさに日記があれば読みたい。そう思ってた俺にとってこの更新は嬉しい。青天の霹靂いや星天なのか。マルツァイマルツァイ。ではまた

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